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満洲文字を知る
(3)満洲語について
『言語学大辞典』第4巻(三省堂、1992年)の「満州語」の項(執筆は津曲敏郎氏)
には[概況]として次のような説明があります。
中国に、清(1616〜1912)をたてた満州族の固有の言語。ツングース語の1つで
あるが、現存する他のツングース語とは、いろいろな点で、かなり異なっている。
歴史的には、金(1115〜1234)、明(1368〜1644)の時代の女真語と、きわめて近い
関係にある。17世紀以来の満州文字による豊富な文献を残している。清朝の隆盛と
ともに、満州語も、一時は中国全域に広がる勢いをみせたが、すでに、かなり早い
時期から中国語に押され、現在では、満州族の大部分は、満州語を捨てて中国語を
話すようになっている。今日、口語としての満州語は、黒竜江省の数地点のごく少数
の満州族と、新疆ウイグル自治区チャプチャル(察布査爾)シベ自治県の約1万7千
人のシベ(錫伯)族(シボ族とも)によって話されているにすぎない。後者は、中国では、
「満語」(=満州語)と区別して、「錫伯語」とよばれるが、事実上、満州語の一方言と
見なしうるものである。満州文字をわずかに改良した、シベ文字による書籍や新聞も
出ている。
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つまり、現在では極めて限られた人々によって使用されているだけですが、清朝には
一定の勢力をもったため、多くの文献が存在しているということです。「ツングース語」というのは北東アジア
で話される言語群で、SOV語順や助詞を用いるなど、日本語・朝鮮語・モンゴル語などと
よく似た文法特徴をもっています。満洲語はツングース語の中でも文法体系がかなり単純化している
ため、しばしば「日本人にとって最も学習しやすい言語」とも見なされています。
なお、上の引用では「満州」という表記が用いられていますが、今では「満洲」の方が一般的です。
「満州」というとかつての「満州国」を連想させるためです。実は同じ『言語学大辞典』の
シリーズでも、後に出た『言語学大辞典 別巻 世界文字辞典』(三省堂、2001年)においては
「満洲文字」(執筆は樋口康一氏)という表記がなされています。
ダハイ(達海)によって満洲文字の表記法が整備された後の、いわゆる「有圏点満文」によって表記された
満洲語を「満洲語文語」と称しています。「満洲語口語」や「無圏点満文」と区別するためですが、
清朝の満洲語文献のほとんどは「満洲語文語」で書かれています。
(1)満洲文字とは何か?
(2)満洲文字の構造
(3)満洲語について
(4)満洲語の文献
(5)無圏点満洲文字
(6)文字表
(7)基本参考文献
(8)モンゴル語を記した満洲文字
(9)漢語を記した満洲文字---1.文献
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