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資料名イヴァン4世のヂェンガ銀貨
資料記号r2k02
文字/言語キリル文字/ロシア語
材質/形態銀/円形コイン(打刻)
重さ**g
大きさ径:**mm、厚さ:**mm
管理/所蔵酒井俊昭氏蔵
 16世紀半ばのイヴァン大公治下で発行されたヂェンガ銀貨。ヂェンガは2分の1コペイカ。 表面(画像1枚目)には太刀を持った騎士が描かれ、裏面(画像2枚目)には「大公イヴァン」と記されている。 ただし銘文は上部と右部の一部を欠く。 同種の他の銀貨を参考にすれば、銘文は上段「КНSь(公)」、中段「ВEЛIКI(大)」、下段「IВАН(イヴァン)」とあるはずである。
 「КНSь」は現代ロシア語では「КНЯЗь」と綴られる。 同種の他の資料では「КНSь」の上に波型の記号が見えるものがある。 単語綴りの部分省略を表すチルダ記号(ロシア語ではтитлоと称する)である。 本資料では残念ながらその部分は見えない。 なお、「S」は古くは破擦音であったが、16世紀にはすでに「З」と等価(すなわち[z]〜[s])であった。 「S」および略字記号(титло)は18世紀後半にアカデミーによって廃止される。 「ВEЛIКI」は現代ロシア語では「ВEЛИКИЙ」と綴られる。 「И」と等価の「I」は1918年に至って廃止された。 「大公」は現代ロシア語では「ВEЛИКИЙ КНЯЗь」となる。 下段「IВАН」の「А」は「d」のような字形で記されている。 「В」の字形も特徴がある。

参考文献:
 小林潔『ロシアの文字の話』(ユーラシア・ブックレット57.東洋書店2004)
(文責:中村雅之)